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80年代のバイクブームと漫画

80年代のバイクブームと漫画

日本のバイク史を紐解いてみると「バイクバブル」と評される時代がある。1980年代、この時期を外してバイクは語れない。

80年代はバイクの黄金期

大排気量のバイクが日本に初めて登場したのは90年代後半から70年代初期だ。今までは国産バイクは大排気量モデルがほとんどなかった。まあ、リッターなら国産じゃなくてハーレーかトライアンフだよねえ、性能的に見てもさあ…みたいな風潮があった。日本なんて、世界から見れば二流のバイクを作るような国だったんだ。70年代が来るまでは。

ところがここで本気を出してきたのがホンダとカワサキだ。ホンダCB750 FOUR、カワサキ900 SUPER FOUR(Z1)と高出力のバイクを市場にぶちかまし、その精緻な設計と出力の高さはバイク業界で話題の的になった。

ホンダのCB、カワサキのZを皮切りに日本車はガンガンとバイクを作って、バイク大国と言わしめるまでになった。そんな波に乗って”黄金期”80年代に突入する。

バイク漫画がブームを後押しした

さて、ここでバイク漫画が出てくる。70年代からの流れを見る限り、日本がバイク大国になったからといっても、マシンを買ってくれる人がいなければ話にならない。だから、この時期にバイクにあこがれる若者を増やしたきっかけがあったはず。それは何か?

漫画だ。この時期には「まだバイクに乗ってないの?」と言わんばかりに登場し、バイクのすばらしさを滔々と語った。80年代の黄金期を作ったのは漫画だと言っても過言ではないかもしれない。しかもどれも名作である。

鬼滅の刃が流行ったころに子どもが興味を持って市松模様や鱗模様といった渋すぎる和柄のマスクや服を好みだしたように、当時の若者が目を向けたのがバイクだった。当時も「流行を追うなんて馬鹿らしー」と斜に構えた子どももちろんいた。だが、ものが流行るには相応の理由と魅力があるのだ。

漫画は面白いし、カッコいいから、好き。好きになるのはいつも単純だ。特に感受性の高い10代からのバイク人気はすさまじいものがあった。

この時はスマホなんてなかったから、若者にとって暇のはけ口といったらスマホよりもマンガに軍配が上がる。その漫画には「バイクはカッコイイ!バイクに乗るとモテる!」といったバイク賛歌が描かれている。これは乗らなきゃ損だろ?

ただ、流行には功罪がある。バイクブームで暴走族も激増したし、事故も増えた。この時代をよく知っている人を親に持つのなら、「バイクには乗るな」「免許も取るな」なんて口を酸っぱくして言われたこともあるだろう。この時代に知り合いをバイクで亡くした人は今の比ではない。

そういう光と影の部分を見据えたうえで、それでもバイクが好きだと言える人生であれたらいいなと思う。