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バイク漫画の「名シーン」あるある

バイク漫画の「名シーン」あるある

バイク漫画を読んでいると物語の面白さに引き込まれる一方で、現実のライダー目線で見ると、思わずツッコミを入れたくなるようなシーンに出会うことはないだろうか。

物理法則を無視したライディングや、ヘルメット越しとは思えないクリアな会話など、漫画ならではの「あるある」は作品を盛り上げる重要なスパイスだ。今回は、そんなバイク漫画特有の愛すべき非現実的な名シーンについて語っていきたい。

ガードレールや壁を使った常識外れのコーナリング

バイク漫画のクライマックスといえば、やはりライバルとの激しいバトルシーンだ。峠やサーキットで極限状態に追い込まれた主人公が、起死回生の策として繰り出すのが、ガードレールや壁を使ったコーナリングである。

現実であれば接触した瞬間に転倒し、大事故につながる危険極まりない行為だが、漫画の世界では違う。遠心力を利用した超絶テクニックとして描かれ、火花を散らしながら猛スピードでコーナーを駆け抜けていくのだ。

タイヤをガードレールに押し付けて加速するという理屈は、物理的には摩擦抵抗で減速してしまうはずなのだが、そんな野暮なツッコミは無意味だ。マシンのカウルが削れ飛び、ライダーの膝がコンクリートを擦る描写は、限界を超えた闘志の現れとして読者の目に焼き付く。

たとえ現実ではありえないと分かっていても、その迫力と「ここ一番で壁を使う」という破天荒な発想に圧倒され、ページをめくる手が止まらなくなってしまうのである。

高速走行中でもヘルメット越しに普通に会話ができる

ツーリングやレースの最中、時速100キロを超えるようなスピードで走っているにもかかわらず、キャラクターたちがまるで静かな部屋で隣同士に座っているかのように会話をするシーンも定番だ。

現実には猛烈な風切り音や爆音のような排気音、エンジンの振動などで、大声を出しても何を言っているか聞き取るのは困難である。現代でこそインカムが普及しているが、それがない時代設定の作品でも、彼らはヘルメットのシールド越しに複雑な作戦会議や人生相談ですら普通に行っている。

しかし、この謎のテレパシーのような会話能力があるからこそ、走行中の心理描写やドラマが生まれ、物語に深みが出るのだ。もし現実通りにハンドサインや大声での怒鳴り合いだけになってしまえば、繊細な感情の機微を伝えることはできないだろう。

この「聞こえるはずのない声」は、ライダー同士の魂が共鳴している証であり、読者がキャラクターに深く感情移入するために必要不可欠な嘘なのである。

ライバルがいきなり背後に現れる瞬間移動

レースの終盤、独走状態だと思っていた主人公がふとバックミラーを見ると、遥か後方にいたはずのライバルがいつの間にか真後ろに張り付いているという展開もよく見られる。直前のコマまでは影も形もなかったはずなのに、エンジンの性能差や物理的な距離を無視して、次の瞬間には背後に巨大なプレッシャーとして現れるのだ。

現実のレースであれば、ラップタイムや区間タイムで接近はある程度予測できるものだが、漫画のライバルたちは気配を消して忍び寄る。気合と根性、あるいは覚醒した天才的な走りで物理的な距離を一瞬で詰めてくるこの現象は、まさにホラー映画のような緊張感をもたらす。

この忍者のような現れ方は、主人公に一瞬たりとも安心感を与えず、最後まで勝負の行方を分からなくさせるための王道の演出と言えるだろう。背後にピタリとつけられた時の主人公の驚愕の表情と、不敵に笑うライバルのコントラストこそが、バイク漫画におけるバトルの醍醐味なのだ。