バリバリ伝説を語る
昔の漫画だし、大好きな漫画でもあるため、ネタバレありきで話をしてしまうと思う。自分で読みたい!という方はまずバリバリ伝説を読むか観るかすることをおすすめする。
ざっくりとあらすじ
高校生の巨摩郡(グン)は、スピードをもとめて峠道を攻める日々を送っていた。主人公・グンの愛車はホンダCB750Fで、教習車としても使われており、グンの愛車ということで一躍人気になった。
ちなみにこの時代、大型免許は一発試験しか認められていなかったので、当時大型バイクに乗っていた人は一目置かれる存在だった。……のだが、合格率と難易度は比例しないし、あの時代の暴走族がご丁寧に免許を取りに来るとは思えないけどね。
さて、話を戻すと、グンの才能をいち早く見抜いた「日本人の世界チャンピオンを輩出したい」と願う一ノ瀬 美由紀にサーキットの世界へ誘われることになる。そこからプロの道へと進み、ライバルを倒しまくってチャンピオンの座を手に入れる……と、あらすじだけだと典型的なサクセスストーリーのようにも見える。
永遠に勝てないライバルの存在
ただ、グンが唯一勝てなかったライバルがいる。それが、一緒に峠を攻めた聖秀吉(ヒデヨシ)だ。
金持ちのボンボン息子で型破りかつ派手な走りをするグン。一方、貧乏で苦労人、理にかなったライディングテクニックで攻めるヒデヨシ。天才肌と職人肌。とても対照的な二人だ。
グンは直感で走っているため無駄が多く、緻密なテクニックで無駄なく走るヒデヨシにはなかなか勝てない。タイプが違うながらもお互いに認め合い、それをおくびにも出さず衝突しながらも、チームメイトとしてスズカの耐久4時間に挑みます。
レース後にグンとヒデヨシはお互いに認め合い、ヒデヨシも「プロになる」と宣言する。しかし、グンとの最後の公道バトルで勝利を収めたあと、秀吉は事故で他界してしまうのだ。
グンよりも存在が大きくなり過ぎたヒデヨシを作中から退場させるための手段だったという話も聞くが、数々のライバルに打ち勝つ主人公でも「一度も勝てなかった」ライバルが心に残り続け、グンが彼の遺志を継ぐという展開はかえって作品をもっと熱くする要素になったのではないかと思う。彼が死ななかったらラルフ・アンダーソンも登場しなかっただろう。
ヒデヨシの死後、グンはほとんどヒデヨシのことを振り返らない。回想することもない。ただ少し弱気になった時、その存在を思い出す程度だ。
グンにとって大きな存在であるはずのヒデヨシをあえて頻繁には出さないという演出も好きだ。プロの世界では、思い出に浸っている暇などない、振り返らず勝ちに行けというメッセージも(勝手ながら)読み取ってしまう。
バリバリ伝説は、若者がひたすらに努力する清々しさがあるストーリーだ。先が読めると言われようが、実際に読んでみなければこの感動は味わえないだろう。まだ読んでいない人にはぜひ読んでほしい漫画だ。