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750ライダーを語る

750ライダーを語る

バイク漫画には短編が多いが、750(ナナハン)ライダーは異例の長編漫画だ。750と高校生の日常を描いていて、10年続いた息の長い漫画である。

750ライダーのあらすじ

『週刊少年チャンピオン』で1975~1985年まで連載され、文庫本10巻分のボリュームを誇る長編漫画だ。

初期・中期・後期と、絵柄はもちろんストーリー路線もガラリと変更するのは見どころだ。初期は暴走族とバトルする内容だったが、次第に学園生活を描く青春モノに変化し、後期はキャラクターの心情をポエムで表現しながら日常生活を描くほのぼのとした感じになった。時代が求める漫画をとらえて描き続けたことが、10年間愛され続けた所以でもあるだろう。

読者層と時代の背景に合わせて変化していったことでバイク漫画としては息の長い漫画になったのかもしれない。

読み返してみての感想

久しぶりに読み返したが、1話における主人公・光の行動は正直ちょっとヤバかった。時代ゆえというべきだろうか?ホンダ・ドリームCB750フォア(愛称CB子)で危険運転するし、愛車が先公(熊田先生)に没収されると見越してバイクのブレーキのネジを外して事故を誘発する凶悪さ。

ちなみに学校に無断で持ち込んできた光の750を運んでいた先生はもちろん病院行きである。

熊田先生に「オートバイに乗る人間を全員暴走族と決めつけるな」と啖呵を切るシーンが1話目ではあるんだけど、読者視点では「えっ」という感じだ。なにせ主人公が遅刻を避けるために赤信号を無視し、警官の声も無視してバイクを走らせて登校した後だったので。彼のバイク通学風景は、光本人の言葉を借りれば「きちがいじみた乗り方をするライダー」のそれである。

自分を客観視できない若者ならではの……いや、うーん、バイク漫画ってこんなもんかもしれない。深く考えないでおこう。

親たちには「ああ、やっぱり息子にバイクは乗せない!絶対に!」と思わせるにふさわしい登場だった、と今では思う。少なくとも、2020年初頭の価値観ではそうなる。昔はさほど変に思わなかったような気もするんだけど。

1巻の光はとてもアウトローだが、中~後期の光はトゲが抜けてのほほんとした雰囲気の少年になった。絵の変化もそうだが、性格もほとんど変わっていて、見返してみると驚く。でも、どの段階でもついページをめくってしまう面白さは失っていない。

ちなみにオートバイ通学をたしなめ、光の750を運んでいる途中で事故って病院送りになった熊田先生はちゃんと生きている。後期ではちょっと口うるさいがいい感じにお茶目なキャラとして定着した。

そういう点も含めて、いい意味で角が取れて、日常の中の750の魅力を最大限に押し出す漫画になったのではないかな、と思う。

劇画調から日常系のポップな感じでシフトしたので、劇画チックな絵柄と物語に惹かれた人は途中からちょっとがっかりするかもしれない。しかし日常系として見ると名作と呼ばれる作品なので、日常系が好きな方にはぜひ中期に差し掛かるまでは読み進めてほしい。