TWINを語る

TWINを語る

TWINはバイク漫画の名作として外せない。始終重たい雰囲気のまま物語は進んで、それでもかすかに希望を感じさせる。ふと思い出しては読み返したくなる漫画だ。

今では紙の漫画は手に入りにくいが、電子書籍があるのでぜひ読んでみてほしい。

TWINのあらすじ

裕福な家庭の娘として生まれた響は、オートバイレーサーの一也と付き合っていたが、彼氏が浮気する場面を見てしまい、失意のうちに自殺を選ぼうとする。ビルから飛び降りようとした矢先、その下で喧嘩をしてボロボロになったヒョオと出会うところから物語が始まる。

陰鬱な雰囲気を抱えるヒョオは死にたがっており、何かと死のうとするが、そのたびに響が止めに入る。

そして響と一也によるトラブルに巻き込まれながらもバイクと出会い、サーキットで走るに至る。至るが……。

“ひとりじゃ歩くこともできない”

死にたいという衝動にむしばまれているヒョオに対して、響はこう言った。「あなたはバイクと同じ、ひとりじゃ歩くこともできない……」この言葉がヒョオの心に波紋を起こし、彼の関心をオートバイに向かわせる。

彼の母親は正気を失っており、ヒョオはその責任を感じていた。母親はバレリーナになるという夢を諦め、子どもを産むことを反対していた父親が姿をくらましたこともあって失意に打ちひしがれており、そんな最中に子どもを産んで正気を失った。

ヒョオは「自分のせいで母親がこうなった」と感じており、父親にも母親にも望まれない子だったのだと植え付けられ、ついに自らの破滅を望むようになった。誰からも望まれなかった、存在を許されなかった命を消してしまいたいという思いが、ヒョオを死に向かわせている。

もう一方のTWIN(ふたご)

響がヒョオに惹かれている理由は、「自分と似ているから」だ。響は裕福な家庭ではあったが両親が多忙で、孤独に身を置いた子ども時代を過ごした。どちらも親から愛されなかった孤独と、存在を否定されているという自覚を抱える双子(TWIN)のような存在。そんなヒョオに共感した響は、ヒョオに盲目的に惹かれていく。

「バリバリ伝説」がストレートに勝ち抜くことを描いている一方で、「TWIN」では孤独な青年がプロレーサーになってチャンピオンになることが目的ではない。TWINではヒョオや響の関係だけではなく、主要な登場人物の親子関係とそこに潜む問題が丁寧に描かれている。つまり、親子の確執を乗り越えて、今度は自分たちが「親」となる成長物語でもある、と読み取ることもできそうだ。